治験とは。治験アルバイトやモニター募集参加で高収入・高額報酬を稼ぐ方法。副作用による病気や脂肪の危険はないのか。検査方法や費用などの説明です。(介護・医療・健康メディア「リトリート」編集部 大畑亮介)
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治験、ネットで参加募る 新薬開発、規制緩和で医師が主導
2003年8月9日、朝日新聞
新薬の開発を加速させようと、インターネットで臨床試験(治験)の参加者を募る動きが活発になっている。規制緩和を追い風に、医師による治験への協力者を集める専用サイトも近く登場。先行する米欧の製薬大手や医療業界に追いつきたい考えだ。
治験は、厚生労働省からの承認を得るため、新薬の安全性や効果を確かめるのが目的。製薬会社にしか認められていなかったが、2003年7月30日施行の改正薬事法で医師主導の治験が認められた。
NEC子会社のNECインターチャネルは、医師による治験への参加者を募るサイトの運営を近く始める。治験の内容や募集する患者の条件などを告知。応募者にはネット上で現在の症状などを聞く。条件に合う患者には医師の連絡先を伝える。医師が治験情報を掲載するのは無料で、サイトの運営費は製薬会社などの広告費でまかなう考えだ。
サイトには、様々な治験の内容が表示されるので、「治療薬や治療法に関する情報を求めている患者に役立つはず」(事業開発本部の長嵜和子プロデューサー)という。サイトに掲載する治験数は今後3カ月で100件程度を見込む。
新薬開発は米欧の優位が目立つ。費用は巨額で、画期的な新薬には数百億円かかると言われる。製薬会社は採算が見込めないと、治験に二の足を踏みがちだが、海外で承認されて国内では未承認の薬を患者が望むケースも増えている。医師主導なら、こうした薬の治験も活発になると期待されている。
従来の製薬会社が行う治験では、NECインターチャネルが2000年9月からサイトを運営。がんの治療薬など21件の掲載実績がある。参加希望者向けに専用コールセンターを設置して看護師を待機させ、治験を実施する製薬会社のコスト減を図っている。
ほかにも、治験の事務処理を請け負う日本メディカル・ヴィタが2000年9月から、イーピーエスが2003年2月から治験情報サイトを運営するなど、広がりを見せている。
注射型糖尿病薬被験者募集/小宮一郎琉大医学部助教授に聞く/いつでも中止が可能/健康な人で治験済みの薬使用
2000年7月11日、琉球新報
注射型糖尿病薬被験者募集/小宮一郎琉大医学部助教授に聞く/いつでも中止が可能/健康な人で治験済みの薬使用
製薬会社が新薬の治験に参加する人を募る新聞広告が、沖縄県内の地元2紙にこのほど掲載された。厚生省が1999年6月、被験者の募集広告を解禁したためで、すでに首都圏などではテレビで募集CMも流れ、「従来の被験者不足を解消し、新薬開発のスピードアップにつながる」と期待がかかる。
沖縄県内2紙に掲載されたのは、新しい注射型糖尿病薬の治験に協力する人を募る、アベンティスファーマ(本社東京)の広告。琉球大学医学部第2内科の小宮一郎助教授(医学博士)に、糖尿病や琉球大学病院での治験への取り組みなどについて話を聞いた。
゛もろ刃の剣゛をコントロール
糖尿病患者は全国700万人とされるが、小宮助教授によると「予備軍も加えると推計で1500万人、国民の約1割が糖尿病かそれに近い病態。沖縄県内では少なくとも6、7万人程度」。
生活習慣病の糖尿病は自覚症状がないことも多く、治療を受けないまま悪化することも。進行すると合併症を引き起こし、「全身の病気」に。しかも1度かかると治すことは難しく、適切な血糖コントロールと食生活改善に努めながら一生、糖尿病と付き合う覚悟が必要ともいわれる。
しかし「早い段階でインスリンを使うことによって、合併症を防ぐことができ、治療効果を高められる」と小宮助教授。今回の被験者募集広告は、糖尿病でもインスリン非依存型(2型)患者のための、インスリン注射型薬開発に向けたものだ。ところが、インスリンには「末期に使うもの」などのイメージが強く、患者や医師の中にも抵抗を持つ人が少なくないとも。
これに対し小宮助教授は「ほとんどの飲み薬は血糖を下げるために膵(すい)臓に働きかけるが、使い続けると膵臓が疲れ切ってしまう。インスリンは、その膵臓を休ませるもの。確かにインスリンも使い過ぎると今度は血糖を下げ過ぎることになり、゛もろ刃の剣゛。医師のコントロールのもとで適切に使うことが大事」と、強調する。
厳格な実施基準
琉大病院では薬剤部を中心に治験管理室を設置。薬剤師がコーディネーターとなり、患者への説明は担当医師とコーディネーターの2人で行う。一般にコーディネーターの役割は被験者に対する治験の目的や方法、治験薬の性質などについての説明のほか、製薬会社との調整などがある。
治験実施には、1997年の改訂で厳格になった臨床試験の実施基準(新GCP)によって義務付けられた、文書による説明と同意などの手続きが必要だ。いったん説明を受けた後、治験希望者がちゅうちょした場合や、開始後に中止したい場合、病院として「引き止めることはしない」という。
治験の際、心配されるのが副作用。万が一副作用が出た場合や、患者に何らかの不都合が発生した場合は、即座に中止するなどの措置が取られる。治験薬の副作用による治療費や後遺症などは、製薬会社が補償することが一般的だ。小宮助教授は「治験という字面から、人体実験のような印象を与えかねないが、動物実験を経、さらに普通の健康な人への治験も終えた薬を使うので、万一副作用が出ても後遺症が残ることはない」と話す。
注射型糖尿病薬の被験者募集期間は2000年7月15日まで。問い合わせはアベンティスファーマ。
(健康)膵臓がんに新治療薬、札幌医大など臨床試験 治験参加患者を募集 /北海道
2013年11月13日、朝日新聞
札幌医科大学(札幌市)は、膵臓(すいぞう)がんが進行して有効な治療法がない患者に対するがんワクチンによる治療法を開発し、2013年10月から、有効性を確かめる臨床試験を始めた。ワクチンは注射するだけなので、設備の整った医療機関が少ない地域でも活用できる可能性がある。札幌医科大学は、試験に参加する患者を募集している。
膵臓がんは、初期症状がほとんどないため発見が遅れ、術後5年間の生存率は10~20%という治療が難しいがんの1つ。
札幌医科大学によると、新しい治療薬は「サバイビン2B」と名付けられたがんペプチドワクチン。がん細胞の表面には9つのアミノ酸がつながってできる分子(ペプチド)があり、それをワクチンとして注射すると、がん細胞をやっつけるキラーT細胞が活性化する。第1段階となる安全性の確認試験は2013年5月に終了し、重い副作用は認められなかったという。
10月から始めた試験は薬の治療効果を確かめるもので、膵臓がん患者71人を、サバイビン2Bを皮下注射する群、免疫力を高める効果があると見込まれるインターフェロンと併用する群、何もしない群の3つに分けて治療効果をみる。サバイビン2Bは2週間に1度をめどに数回注射する。全体の試験期間は約2年間の予定で、東京大学医科学研究所付属病院(東京都港区)でも行う。
札幌医科大学病理学第1講座の佐藤昇志(のりゆき)教授は「最終目標は小さな町の診療所レベルでもできる形。試験が全てうまくいけば、(医療機関の偏在が激しい)北海道に合う治療になる」と話す。
札幌医科大学は試験に参加する患者を新たに募っている。条件は確定診断があること、標準的な治療をすでに受けているが、がんワクチンの治療は受けていないこと、同意を得るとき20~85歳であることなど。副作用として発熱や全身のだるさなどの症状が起きる可能性があるという。問い合わせは病理学第1講座の鳥越(とりごえ)俊彦准教授。
投薬バイト すがる失業者*2泊6万円の“実験台” 家族の顔よぎる*体は心配 でも応募続々
2002年5月6日、北海道新聞
新薬開発のため薬の効能を試す臨床検査アルバイトに、すがるような思いで参加する失業者がいる。長引く景気低迷で就職のチャンスがなかなかつかめない中、モニターとして検査を引き受けると、3日程度で6、7万円の収入を得られるからだ。高収入とはいえ、「体に悪影響は出ないのか」と不安もよぎる。
2001年3月に建設会社をリストラされ失業した札幌市清田区の男性(37)は週に1、2日、トラック運転手のアルバイトをして暮らす。
病院名記載なし
2002年1月、運転手仲間が1枚のチラシを持ってきた。「投薬バイト募集」とあり、病院に2泊して薬を服用するスケジュールが並んでいた。病院名などの記載はなく、ちょっと不安になった。
アルバイト代は5万9000円。問い合わせ先の携帯電話に連絡すると、札幌市東区内の病院で健康診断を受けるよう指示された。病院では薬を飲みながら採血や採尿のチェックを受けた。暇つぶしに本を読んだり、テレビを見たりした。「こんな楽なアルバイトがあるのか」と思った。その矢先、病院から「今後、3カ月間は同様の臨床検査は絶対受けないように」と言われた。体への影響が心配になり、背筋が凍りそうになった。
「臨床検査のアルバイトに飛びついたのも仕事がないから。でも、もう2度としないつもりだ」
それでも希望者は多く、募集担当者は「モニターはすぐ埋まってしまう」と話す。
「リスクも高い」
2001年9月から失業中の札幌市厚別区の男性(32)は知人から臨床検査のアルバイトの話を聞いた。インターネットで「創薬ボランティア」「治験ボランティア」「臨床試験モニター」などのキーワードで検索してみた。「2、3泊で6-7万円のアルバイト収入」と呼び掛けていた。モニター募集病院の情報を販売するビジネスさえあることに驚いた。「医者がチェックするから大丈夫だろう」と、東京の事務局に登録した。
2001年11月に連絡が入り、札幌市手稲区の病院で健康診断を受けた。病院に2泊して協力費は4万円との説明を受け、「そんなにもらえるのか」と心が揺れた。だが「その分リスクも高い」と、家族の顔を思い浮かべ断った。
新薬開発のため製薬メーカーから臨床試験を受託する専門業者の北海道進出も目立つ。東京に本社を置く業者は、2001年8月に札幌営業所を開き、2002年春には旭川営業所も開設した。北海道外の営業所は埼玉など3カ所だけだ。
北海道内に力を入れる理由について、専門業者は「一定人数の確保を見込めるから」と説明する。景気の悪い北海道が狙い目なのか。契約病院名などを尋ねると「具体的な取材には、お答えできません」と言った。